episode 97 同類

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「……まさか!」 それが何の音なのか ――彼もすぐ思い当ったみたい。 九条さんは驚いて声を上げかけ 慌てて己の口に手を押し当てた。 「――これがお父様の秘密さ」 僕は壁際から離れると 声をひそめて恋人に耳打ちする。 「信じられないな。だってお父様は僕らのような人間に偏見があるって……」 「悟られないためにわざとそう装ってたんでしょう――もしくは」 「もしくは何?」 「もともとはそういう人だったのに、あの好色執事に無理矢理開拓されたか――」 「あーもう」 生々しいニュースに 潔癖な僕の恋人は天を仰いでソファーに身を投げる。 「もっとも――ベッドの中じゃもちろん、主従関係は逆転しているんでしょうけどね」 「やめて。それ以上聞きたくない」 さすがにやる気も失せたのか。 九条さんは眼鏡を外して襟元のボタンを緩めた。 「どうりで。貴恵お姉様がいくら頑張ってもなびかないはずだ――でしょう?」 僕は彼の膝にまたがるようにして もうひとつ、またひとつ――。 シャツのボタンを外してゆく。
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