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「……まさか!」
それが何の音なのか
――彼もすぐ思い当ったみたい。
九条さんは驚いて声を上げかけ
慌てて己の口に手を押し当てた。
「――これがお父様の秘密さ」
僕は壁際から離れると
声をひそめて恋人に耳打ちする。
「信じられないな。だってお父様は僕らのような人間に偏見があるって……」
「悟られないためにわざとそう装ってたんでしょう――もしくは」
「もしくは何?」
「もともとはそういう人だったのに、あの好色執事に無理矢理開拓されたか――」
「あーもう」
生々しいニュースに
潔癖な僕の恋人は天を仰いでソファーに身を投げる。
「もっとも――ベッドの中じゃもちろん、主従関係は逆転しているんでしょうけどね」
「やめて。それ以上聞きたくない」
さすがにやる気も失せたのか。
九条さんは眼鏡を外して襟元のボタンを緩めた。
「どうりで。貴恵お姉様がいくら頑張ってもなびかないはずだ――でしょう?」
僕は彼の膝にまたがるようにして
もうひとつ、またひとつ――。
シャツのボタンを外してゆく。
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