episode 97 同類

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至近距離でガラス玉みたいに澄んだ瞳に見つめられると――。 羞恥心? 罪悪感? 「もう……許して」 なんとも言えない いたたまれない気持ちになってくる。 「和樹――怒っちゃいないよ。ただ君の身に起こったこと、君が感じたことすべてを知りたいだけさ」 そう。 悪意がない分余計に ――冗談ではすまなくなる。 「征司お兄様は……薫お兄様に見せつけるみたいに僕を弄んで……言ったんだ」 「なんて?」 「……誰の所有物か……ちゃんと言えって」 長い指を押しこまれ 虐められた身体が疼く。 意地悪くかき混ぜられた口内も 今はカラカラに乾いて――。 「誰の物だと言ったの?」 追い詰められた動揺と 求められる快感で 「もちろん……あなたの物だと」 否が応にも唇が震える。 「そう。それで僕のところに?」 騙されたはずなんてないんだ。 僕がどう反応して どんな嘘をつくかなんて 多分彼が一番よく知っている。 「うん。そうだよ……」 満面の笑み。 僕の両頬を包み込み 「ンッ……」 ようやくありつける――世界一柔らかいキス。 「ごめんね和樹――意地悪して」 ――だから九条敬は怖いんだ。
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