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「それで?お兄様たちに虐められたから――僕に慰めてもらおうと?」
言いながら
九条さんは僕の腕を引き
――広いベッドへ導いてゆく。
「うん。そうだよ……」
あくまで従順な忠犬のように
僕は上目づかいに従った。
「だけどさ――僕だって気分によっては同じことをしてしまうかもしれないよ?」
つぅーっと冷たい指先が
嘘つきな僕の喉元を伝う。
「君を泣くほど虐めて――誰の物かと問い詰めるかも?それとも――言葉にできないほど恥ずかしい事を強要するかもしれないよ?それでもいいの?」
本気だ――。
柔らかく上品な声音とは裏腹に
九条さんの瞳は笑ってはいなかった。
「いいよ……九条さんになら……意地悪されてもかまわない」
だけどその瞳が逆に
根っからマゾヒストの僕に
うまく縄をかけ甘く縛りつけるんだ。
「むしろ――僕が泣くまでして欲しい」
唇を甘噛みしながら
僕は応えるように吐息で囁いた。
「ああ、和樹――。君が近くにいるだけで、いまだに僕は――こんなに胸がドキドキする」
大きな瞳が欲望と慈愛に満ちて揺らぐ。
「でも待って――隣に声が聞こえちゃうかも」
しばらくすると王子様の中で
黒い欲望が理性に勝って――。
「いいや大丈夫。
今日は愛し合う間中ずっと――僕の舌で蓋をしておこう」
僕をベッドに押し倒し
――今度は大胆に唇を奪う。
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