episode 98  食うか食われるか

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episode 98  食うか食われるか

翌日――。 九条さんが調達してきた借り物のスーツで 「いいね。可愛いよ」 娼婦のようなみなりから 僕は完全な御曹司へと姿を変える。 「九条さん、そろそろ時間だよ」 「分かってる。もう少し――うん、いいよ」 鏡の前に僕を座らせると 前髪を綺麗に撫でつけ九条さんは満足そうに笑った。 「それにしても――僕はすっかりいかれてる。君のこんな軽はずみな計画に加担しようなんて」 「軽はずみじゃないよ。すべてはタイミングって言うでしょう?」 「――それじゃ、うまくいったら乾杯しようか」 そうだ 丁度いいタイミング。 「敬様――お呼びでしょうか?」 部屋のドアがノックされる。 「ああ、待って」 扉の向こうに控えているのは 他でもない――高山だ。 「すまないね。少し手伝って欲しい事があって」 鏡越し肩をすくめ 九条さんは部屋を出てゆく――。 「さてと」 僕の計画の全容はこうだ。 九条さんが高山を足止めしてい間に 僕は執事の尻に敷かれた当主を捕まえる。 そして――。 あなたたちの秘密が 一族に知れたら大変ですよと一言 親切に忠告してやるのだ。
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