episode 98  食うか食われるか

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パーティー会場に足を踏み入れると 「いたいた」 すぐに見つけた。 年の割にスマートな後姿。 ――天宮家の当主その人だ。 「お父様」 声をかけると 「か……和樹……」 面白いぐらい目を丸くして僕を振り返る。 「……どうしてここに?」 僕が天宮家のトラブル・メイカーだって知ってるから? それとも昨夜の後ろめたい情事のせい? 疲れ切った表情で当主は言い淀む。 「恋人追って来たのですよ――お父様」 僕は他のゲストに屈託のない笑顔を振りまきながら、意味深に声をひそめる。 「ところで、昨夜はよくお休みでしたかしら?お隣にいらっしゃるなんて知らなかったものだから。僕らのいい声が聞こえていなければいいのだけど……」 自分にも思い当たる節があるからだ。 「よさないか、こんなところで!」 怒りと羞恥心の入り混じった表情で ――頬を赤らめ僕をたしなめる。 「ああ、お父様。すみません――至らなくて。だけどこれでも、場をわきまえていないことぐらい十分承知なんです」 そんな顔してもダメさ。 僕は可愛い蛇の如く 当主からまとわりついて離れない。 「だからこれはワザとなんですよ、お父様――」
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