episode 98  食うか食われるか

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「な、何だって……」 案の定――。 追い詰められたお父上はいっそう目を見張る。 「いけませんね、そんな顔なさっちゃ。ポーカーフェイスが苦手だと、我が家のゲームにはとても勝てない」 かわいそうに。 天宮家の当主らしからぬ動揺。 「ああだけど、あなたには強い味方がいらしゃるか。専属執事の高山――あの人は達者でしょう?いろいろと」 高山の名を口にした途端 それこそポーカーフェイスとは程遠い。 僕を見る目に――あからさま畏怖と敵意が入り混じる。 「これ以上、あれこれ言う必要もないようですね」 計画通り――。 まるで仲睦まじく父親と抱擁する形で 「天宮家の当主が――仮にも執事といい仲だなんて、一族に知れたらどうなるでしょうね?」 僕はお父様を抱きよせ、耳元に囁く。 「時代が時代なら、使用人は打ち首獄門だ――このご時世でも彼はもう天宮の家に……いやあなたの側にはいられないでしょうねぇ」 「……黙れ!」 おや。 公の場所にいることさえ 忘れてしまったみたい。 「……何が望みだ!」 僕の腕を乱暴に振り払うと お父様は声を荒げた。 それもそのはず。 天宮家の当主は 自分の立場以上に大切な 寝室の主を守ろうと必死になっているんだもの――。
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