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「な、何だって……」
案の定――。
追い詰められたお父上はいっそう目を見張る。
「いけませんね、そんな顔なさっちゃ。ポーカーフェイスが苦手だと、我が家のゲームにはとても勝てない」
かわいそうに。
天宮家の当主らしからぬ動揺。
「ああだけど、あなたには強い味方がいらしゃるか。専属執事の高山――あの人は達者でしょう?いろいろと」
高山の名を口にした途端
それこそポーカーフェイスとは程遠い。
僕を見る目に――あからさま畏怖と敵意が入り混じる。
「これ以上、あれこれ言う必要もないようですね」
計画通り――。
まるで仲睦まじく父親と抱擁する形で
「天宮家の当主が――仮にも執事といい仲だなんて、一族に知れたらどうなるでしょうね?」
僕はお父様を抱きよせ、耳元に囁く。
「時代が時代なら、使用人は打ち首獄門だ――このご時世でも彼はもう天宮の家に……いやあなたの側にはいられないでしょうねぇ」
「……黙れ!」
おや。
公の場所にいることさえ
忘れてしまったみたい。
「……何が望みだ!」
僕の腕を乱暴に振り払うと
お父様は声を荒げた。
それもそのはず。
天宮家の当主は
自分の立場以上に大切な
寝室の主を守ろうと必死になっているんだもの――。
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