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「分かったな和樹――お義兄様にもよろしく伝えておけ」
言いたい事だけ言って――。
大間抜けな僕をその場に残し
「――あら、征司さんもうお帰り?」
征司は颯爽と歩き出す。
「ええ。挨拶に寄っただけですから。あとは弟が奥様方のお相手を致しましょう」
「あちらが弟さん?」
「まあ!お人形さんのようだこと」
僕はたっぷりと思い知らされる。
僕は所詮
可愛いだけが取り柄の
王様のお人形――。
「ま、似たようなものですが――生身の男の部分があるだけ――人形より多少は役に立つでしょう」
「まあっ……」
「いやだわ征司さんたら!」
冷たい言葉をあびせ
狡猾に僕を出し抜いて嘲笑う。
分かってる。
――それでもこの人を
憎みきることができない。
今までと何も変わらない。
従い続ける限り大事にしてもらえる。
自立しようとすれば抑え込まれる。
アメとムチ――。
何より一番いけないのは
僕にとってそれが
――心底心地よいということだ。
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