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「下手の横好きです。僕の描く絵を見られたりしたら、それこそ篠宮家の恥だ」
僕は紅緒をなだめるように
頭をポンポンと撫でてやる。
「それなら君も、先代のように若い芸術家を育てるといい。食いつぶしきれん資産があるのだから、有意義に使わなくちゃならん。どうだね?」
紳士が抜け目なく笑うのを
「ええ、全くおっしゃるとおりです」
僕は口先だけで受け止める。
「春人くん、世の中にはね才能はあっても不幸な事情で花開かん種が5万とある。その点君は――生まれながらにして幸運だよ」
「ええ、たしかに」
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