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「恋人のお友達の味は、どうだった。俺より、よかった?」
どういう因果か、さなえさんと最後に会ったカフェで、最高に下世話なことを言ったと自分でも思う。
高校生が口にするようなことじゃないことも、承知の上だ。
だけど、理屈じゃなくて、どうしてか判らないけど……今、愛美さんにこういうことを言ってあげられるのは俺しかいないな、って本能的に察してしまったから。
愛美さんは、俺を精神安定剤代わりにしながら、てっきり英雄くんと順調なお付き合いを続けているのだと思っていた。
最近、英雄くんの昔のことを気にしている様子だとは思っていたけど。
英雄くんの前の女が、彼と同じ職場にいるということを、俺はどうしても愛美さんに言えなかった。
愛美さんはきっと、それを知りたがっていたのに。
それがどうこじれたのか、愛美さんはよりによって英雄くんの友達と寝てしまったらしい。
そして、英雄くんと別れてしまった。
今にも泣きそうなくらいに顔を歪ませた愛美さんが、自分のしたことで充分傷付いていることくらいは判る。
だけど、彼女はそうして自分を責めて、それで気が済んで、やがてすっきりと落ち着くような女じゃない。
たぶん、俺しか……いや、俺と、英雄くんくらいなのだろう。
愛美さんの中の痛いところや恥ずかしいところをずるりと彼女の中から引き出して、目の前に見せてあげて、その上で彼女が満足するまで責めてやれるのは。
その英雄くんとの関係を終わらせてきた愛美さんが縋れるのは、俺しかいない。
頭の中で、奪うなら今が絶好の機会だ、と悪魔がささやく。
グラグラと揺れ動く心を持て余しつつ、ブレンドを一口含んだ。
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