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時間は、流れて。
そこには、大きな腹を抱えた麗しき人妻。
去年の今頃、俺はこのひとをつついて意地悪をして遊んでいたっけ、なんて思い出し方をしてから、彼女とのことがすっかり過去のことであることを自覚する。
大学に進学してしばらくは忙しくしていたけど、「お前の来ない保健室が暇で仕方ない」という額田先生からのメールを受け取って、珍しくぽっかり空いてしまった午後を利用し、母校を訪れたのが、運の尽き。
もうそれ臨月でしょう、と言いたくなるその姿。
愛美さんが、とっても綺麗なひとに見えた。
失礼な言い方になるかもしれないけど、愛美さんはとびきり美人というわけではない。
それでも、以前より薄いメイクの彼女は、以前よりずっと綺麗に思えた。
ただし、変な気はまったく起きないけど。
お腹の中の赤ちゃんがそういうオーラを出させるのだろうか、ママに触らないで、的な何か。
一瞬そんな馬鹿なことを考えてから、ぺこりと頭を下げた。
あのカフェで話をつけてから愛美さんに会うのは、初めてだった。
去年はあれほどあちこちで遭遇していたのに、本当に縁を切ったということになると、まったく出会わなくなってしまうなんて、おかしなものだ。
「仁志くん、久しぶり」
俺を見た瞬間軽く目を見開いたものの、愛美さんは何の憂いもない笑顔でこちらを見つめていた。
まあ、驚くことはない。こういう女性だ。
額田先生は俺と愛美さんを見比べて、やれやれと肩を竦める。
「何だ、お前ら。普通すぎてつまらない」
「元生徒に何を期待してるんですか」
はは、と苦笑すると、額田先生は愛美さんの顔を見た。
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