【番外編】Perfect Crime-2

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   それって、と言いかけて、やめた。  愛美さんは別にそれを言わせたいわけじゃない。  ただ、出会ったときから俺はずっと愛美さんを好きだったから──それだけのことだ。  斉木が、流華さんと付き合っていたときの俺を「楽しそうだ」と言ったのと表裏一体の言葉なだけ。  ……愛美さんへのそういう気持ちが、じっくりと風化しているということを、今もう一度実感した。 「なるほど。そうかも知れませんね」 「でしょ」 「でも……」  俺は立ち上がって、全開の窓を少しだけ閉めた。  風が少しだけ冷たく感じたせいだった。  女のひとの身体を冷やすのはよくない。それが妊婦さんなら、特に。 「昔からずっとこんな感じですよ、俺」  愛美さんの言葉を否定したいわけじゃない。  これまでの、愛美さんと接してきた自分が特別だったということを強調したいわけでも。  ただ、このひととの距離が広がるのは寂しい気がしてしまった。  何ていうんだろう、愛美さんにのぼせ上がっていない俺も、彼女の中に置いて欲しいと言うか。  この先、俺達が特に深く関わり合うことはないのかも知れないけれど。  こういうのは、我儘なのかも知れないけど。  すると愛美さんはもう一度グラスに手を伸ばし、牛乳を口に含んだ。 「……そっか。  じゃあ、本物の特別扱いを  ずっとしてもらってたんだね、あたし」  そう言い落とした愛美さんを、はたと振り返る。  取り返しのつかないものを惜しむかのような、そんな声で。  愛美さんはもう俺を直視せず、グラスの中身を一気に飲み干した。彼女はそのままふう、と息をつく。 .
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