第6話

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   真田は呆れたようにつぶやき落とすと、タバコを持ってない方の手をそっと伸ばしてきた。  じっとしていると、鼻先を人差し指で軽く弾かれる。 「い、たっ」 「……だったら構わねえが、こっちの都合も考えろ」 「だから、誰もいないところでしたじゃない」 「そうじゃねえよ。お前があんなことするから、すぐ戻れなくなったんじゃねえか」 「え?」  ぱちぱち、と真田を見る。  真田はまたイライラして、チッと舌打ちをした。 「これ」  真田はポケットに手を入れると、そのままベルトの留め具の真下あたりで下から上にクイ、と持ち上げる仕草をあたしに見せた。 「──あっ!」 .
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