第6話

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   ようやくなんのことか理解し、思わず口元を押さえる。 「この、バカが。鈍いんだよ」  真田はもう一度舌打ちをする。けど、その口の端が少し持ち上がっていた。 「ごめ……いや、ごめん」 「……いいよ。もう。お前もタダじゃ済まなかっただろうから、痛み分けな」 「……ッ」  なんで、判ったんだろう……。  帰って泣きだしたのは、片想いの辛さに耐えかねただけじゃない。  真田とキスをしたあと、身体の中をのたうち回る熱を持て余して、昂ぶりすぎてしまったせいもある。  真田の瞳が、ギラリとあたしを見据えた。 「来るか?」 「……えっ?」 「来るか? ……今日」  うん、今すぐ、って言ってしまいそうになって。  口を開くのが怖くて、黙って頷いた。 .
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