バレンタイン狂想曲

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「お裾分け。 こんなたっけーチョコ、なかなか食う機会無いし?」 普通って言われたのがかなり悔しくて、 (私が作ったんじゃないけど) 大きな口を開けて、 差し出された一粒をぱくりと頬張った。 勢い余って、彼の指まで口の中に……。 「俺の指は非売品なんですけど? 300円ごときじゃ食わせてやれないな」 ちゅぽって引き抜かれた指には、溶けたチョコが ついていた。 彼はその指を口許に持っていき、 これ見よがしに、親指をペロリと舐める。 ゴックン あまりの色っぽさに、 高級チョコを堪能しないままに 飲み込んでしまった。 あああっ、勿体ないよぉ~。 「ほら」 目の前に突き出された、彼の人差し指。 「舐めて」 はいいいい?! 無意識でくわえるのと、 まざまざと見せつけられてくわえるのとでは、 雲泥の差があるんですけど?! 「ほら、味わえよ」 唇にぴとっと、当てられる、人差し指。 むぅ、と唸りながら 悔しいから、勢いつけてその指をしゃぶった。 「非売品だし、 300円じゃ食わせられないって言ったのに。 お代、頂かなくちゃなあ」 にやっと笑った彼に連れていかれる 寝室。 突き出したのそっちなのに。 ……来年は、ビターじゃないのにする。
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