第15巻・はっく、産院を満喫する

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そうこうしている内に、嫁様が診察から戻ってきました。 別段何も変わりはなかったようなので、ほっと胸を撫で下ろします。 椅子に座ってバキュームのように 「ズゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!」 とジュースを吸い込んでいるはっくと一緒に精算の呼び出しを待つわけですが、ヤツは嫁様が会計のためにカウンターに向かうと、必ずイソイソと後を付いていきます。 そして精算している嫁様の横で、ひたすらプリプリとお尻を振ってかわいこぶっているわけですが… 果たして彼は何をしているのでしょうか。 すると、事務職員の方がニコニコと小さなピンクの包みをはっくに渡しているではありませんか。 そしてそれを 「ニヤリ…」 としながら受け取るはっく…。 その表情は完全に 「お主も悪よのぅ」 系列ですが、実は彼、病院に来ると帰りがけに貰える2個入りのビスコが楽しみで仕方ないんです。 以前、はっくはイチゴがズバ抜けて好き…というお話をしましたが、初めてビスコを食べた時、あまりの美味さにプルプル震えたくらいですから、好きなものランキングではイチゴの上を行くかもしれません。 もう既に事務の方には 「ビスコが好きで仕方ない子」 略して 「ビス子」 と認知されているのではないかと思うばかりに、嬉しそうにピンクの袋を胸に抱き、短い足でジタバタとステップを踏むはっく。 なんて… わかりやすい幼児なのだろうか…。 そんなはっくですが、嫁様談によればたまに事務の方が 「かわいいねぇ」 というコメントだけでビスコを渡すのを忘れることがあるのですが、その時のはっくのテンションはマリアナ海溝より深く沈んでいるようです。 「望むもの全てが手に入るとは限らない」 これも一種の社会勉強という事で…。
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