第1話

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友人の一人がいまだに女子生徒の人気があるのはいつものことだが、夏休みを越えた辺りから泉水と将一が付き合っているという噂が桐丘高校内で広まっていた。 どうして男女二人でいるとすぐに付き合っていると思い込むのか不思議だった。 男女の間に友情は芽生えないということを暗に多数決で決定された気分になる。人間が作る関係は友情か恋愛の二択しかないと言いたげな空気が主に高校生の間で蔓延していると思う。 友情の中でも種類があるはずだ。 昨日の敵は今日の友という言葉のように、敵対関係から発展する友情もある。それなのに男女の仲はすべて恋愛という一つの感情のみで成り立つ。 心理学を習う時、最初に「精神はブラックボックスである。見えているのは氷山の一角」と例えられる。形も無ければ共有することも出来ない感情。それが恋愛という感情なのではないかと泉水は考える。 友情の先の感情、貪欲な感情が付加されて恋愛という綺麗なようでそうでない感情に変わる。 恋愛時におけるその他の付随感情には良い印象のものが少ない。 例えば独占欲。 例えば支配欲。 それらを進んで行おうとする行動は理解出来ないし、やっぱり好きという感情は得体の知れないものなのかもしれない。 .
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