第1話

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泉水がしなければならない理由は、ただの尻拭いでしかない。きちんとした理由なんてどこにも無かった。 顧問の先生は泉水に任せれば問題ないとばかりに干渉しない。生徒会室に様子を見に来ることもなかった。 周囲の浮かれ気分が正直羨ましかった。 二月の十日。 例のイベントまで、あと四日。 泉水は自分には関係ないと無視していたが、家庭教師に日頃の感謝の気持ちを込めてお世話になっている人に贈るにも良いのではないかと言われて頭を抱える羽目になった。 浮かれたイベントなど無視してしまえば良いという思考を一刀両断する言葉にぐうの音も出ない。 「贈り物……」 上手い言い回しだと思う。 それはつまり言った本人にも贈らなければならないことを示唆している。 この忙しい時に用意しなければならないのかと思うと、目の前の作業に手がつかなくなる。 買ったものともなると、値段が馬鹿にならない。佐々泉水に金銭的余裕は持ち合わせていなかった。 作るとなればまだ何とかなるのかもしれないけれど、調理場に立つ時間がなるのなら生徒会業務をこなしている方が有効的だと言える。 .
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