第1話

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昨今のバレンタインという行事は気になっている異性に贈るだけでなく友人にも贈る「友チョコ」というものも存在するらしいと風の噂で聞いた。 由衣に贈ることには抵抗がない泉水は、それでも贈る相手が複数いることにやはり頭を抱えるのだった。 放課後の誰もいない生徒会室に携帯電話の着信音が鳴り響く。マナーモードがいつの間にか解除されたことに驚きつつも、授業中に鳴らなくて良かったと泉水は折り畳み式の携帯電話(所謂ガラケーを未だ愛用している)を開いて相手を確認する。 「もしもし?」 『あ、泉水さん?有村です。今大丈夫ですか?』 「大丈夫だよ、将一くん」 昇藍学院生徒会長の有村将一だった。 将一は高校一年から生徒会長を務めているので、泉水も生徒会長としての見本にしている。知輝は反面教師を言ったところだろうか。 『春のイベントのことなんですが、会場を桐丘にさせていただきたいんですけど、どうですか?』 「将一くん、そういうのは公式の回線を使おうよ……」 公式の回線とは、職員室の電話という意味である。 『面倒だったので』 さらりと言ってのける将一の強さには見習うべき部分があると思う。こういう場面で使おうとは思わないけれど。 .
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