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泉水は思わず携帯電話を耳から離して、相手の顔が見えるわけではないのにじっと携帯を見た。次に今日中に終わらせないといけない仕事はどれかと机中を見渡して、必要な書類を鞄に押し込んだ。
「今生徒会室出るね」
『正門前でお待ちしています』
電話を切って、それも鞄に入れる。
電気を消して扉を閉めて鍵を掛ける。普通ならば職員室に返さないといけないのだが、教師からの信頼も厚く朝一番に生徒会室に来なければならない泉水はその鍵を制服のポケットに入れた。
廊下を進んで正門を目指すと、委員会や部活で残っていた生徒が泉水を避けるように歩く。正門の方からやって来た生徒が泉水とすれ違った後に声をひそめながら嬉々として友人に話している。
「門のところに昇藍学院のイケメンがいた!」
「それって全国模試で生徒会長と張り合ってる昇藍の生徒会長じゃない?」
「やっぱり二人は付き合ってるんだ!うわー、インテリな二人なんてお似合いだよね」
「要くん完っ璧に振られたね……」
「じゃあ要くんに告白するなら今……?」
徐々にヒートアップしていく生徒たちの声をなるべく聞かないようにして正門を目指す。
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