第1話

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 一日一日を始める最良の方法は、目覚めの際に、今日は少なくとも一人の人間に一つの喜びを与える事が出来ないだろうかと考える事である。 ニーチェ  僕の名前は、甲本(こうもと)健太郎(けんたろう)。平凡な名前な僕は、性格も平凡だと云えよう。 ニーチェの言葉にもあるように、一日一善出来たら僕は自分に良いことが返ってくるんじゃないかと思って日々、平和的、打算的に過ごしている今年大学を卒業したばかりの二十二歳の男だ。 そんな僕は今年、シロクマアミューズ株式会社という、ゲーム制作や、ソーシャルネットワークの運営などをしている会社に入社した。そして、今日、突然の宣告を人事部からされたのだ。  このシロクマアミューズは、メインのゲーム制作などの他に、昔から運営していた、シロクマランドというレジャーランドの経営もしていたりする。その遊園地はオープンしてから、三十年経っていて、老朽化に加え、来園者数も年々減ってしまっている、今年、閉園する予定の、郊外の海沿いにある古い遊園地なのだ。 「という訳で、甲本君。明日からシロクマランドに出向宜しくね。今までの仕事内容とは全く違う仕事だけど、そんなに気張ることないよ。閉園までの一か月間、園長をやってくれれば良いんだ。簡単な仕事だよ、誰にでも出来る」  人事部の部長さんが、にこにこと笑みを浮かべながら僕に告げる。人事異動ということだ。今までの部署は僕の希望とはちょっと違う、総務の仕事をしていた。各部署の必要な物資を補充していた僕に突然、人事部部長から面談室に呼ばれ、そんなことを告げられた。 あまりにいきなり過ぎてびっくりしたけど、うーん? 簡単な仕事なのに、こんな微妙な時期になんで前園長さんがいなくなったんだろ? 僕は疑問に思ったので、部長さんに問いかける。 「え、でも、なんで前園長さんの代わりをこんな時期に僕がやるんですか? 新入社員で、総務にいる僕が。それにあと一か月じゃ何も出来なくないですか?」 「え、えっとねぇ……前園長は胃潰よ……じゃなくて、ちょっと体調を崩したから、若い子に任せようと思ってね! 別に全然、ストレスとか溜まるような場所じゃないよ! 全然楽しい遊園地だよ! 幻覚とかお化けとか見えないよ!? 大丈夫だからね!?」
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