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ネタ帳の志穂さんもそうだが、彼女の小説〈ストーカープリンス〉にも、微妙な変化がみられる。
毒のような主人公キラー(草太)は、恋を始めてしまった。
ターゲットの女性を守りたいと考える草太、ターゲットの女性に恐怖を与えたい草太の裏の顔キラー。
女性はキラーに怯え、草太にすがりつく。
草太の葛藤が始まる。
◇◇
そして、電車の揺れは心地よい。
5分おきに車輌の扉は駅で開いて、人々は外に降り立ち、別の顔がこの移動手段の中へ入ってくる。
《ストーカープリンス、すごく良くなってきたと思う》
《そうですか? 清春さんにそう言ってもらえると、うれしいです》
《僕も新しい小説を書こうかなって思った。そんな気にさせてくれる感じ? ほんと面白い》
《へへ、あんまりおだててもダメですよ。なにも出ませんから》
電波のむこうで、志穂さんが笑っているのがわかる。
仕事場でも、少しずつ人の輪に入ってゆく努力を始めたらしい。
《清春さんの新しい小説、読んでみたいな!》
そう、新しい小説を、僕は書きたいと思っている。
電車内のモニターが、新竹ノ橋の文字を映した。
僕の住む、町の名前だ。
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