素直になれなくて

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いつもの見慣れた登校風景。 校舎前の坂道を登っていく生徒の群れがいつもと少し違う。 制服が中間服となり、重たい配色が減った分、爽やかに 軽やかに見える。 「グッドモーニング!モモコ」 ………軽やか……… じゃなくなった。 「おはようございます、スーザン先生………」 もう逃げることはしないけど、出来たら授業以外は会いたくはない。 ATMの利用時間に間に合わずに、まだ残りの修理代を振り込んでないからだ。 「モモコ、車のお金、あなた一体どうしたのですか?」 「え」 「この間の振り込みのお礼に、モモコの家に電話かけたら、 ″ 知らない ″と、お母さんが言ってたわ」 え__?! な、 何て事してくれてんだ、この人?! お母さんには、知られたくなかったのに。 「日本の高校生は、そんなにお金持ってるの?」 「………………」 足取りがすっかり重くなってしまった。 「が、学校に報告なしでバイトしてました」 「バイト?仕事?どんな?」 これ、バレたら謹慎なんだよね。 それを覚悟で美々ビルディングの清掃の仕事の話をしてしまう。 私、たまに、考えなしだよね。 アイツの言うとおりだ。 「モモコ!」 ギュッ______!! 「?!せ、先生?!ティチャー?!」 絶対に叱られると思ったのに、生徒達が見ている中で、スーザンに抱き締められた。 「偉いわ!!」 しかも、ほっぺにキスまで。 嬉しくない嬉しくない!日本人ですから。 「うお、ガチはぐっ」 ハッ! そんな二人を、自転車を押しながら登ってきた空野握手がニヤニヤしてこちらを見ているではないか。 「いや、ガチレズ?」 お、 ま え が、バカにするな____!
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