映画「世にも怪奇な物語」--第一話「黒馬の哭(な)く館」

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無辜(むこ)の男を死に追い込んだ高慢なヒロインが報いを受けたとも取れる結末だが、この話は、しかし、怪奇や恐怖より、耽美を主眼に撮られた作品に思える。 物語前半でのフレデリックの放蕩生活にせよ、ラストの炎の中で死んでいく恍惚の表情にせよ、彼女の内面の堕落や犯した罪の結果を断罪調で描くというより、明らかにそれ自体の官能性、煽情性を目的に撮られている。 そもそも、作品のモチーフとなった馬そのものが、西洋文化圏においては情欲の象徴である。 ジェーン・フォンダのデコルテをそのまま象った木製の胴衣は、いわば中世風のボンデージであり、彼女の挑発的な肢体を強調している。 しかし、同時に、これは貴顕な権力者の地位にあるとはいえ、女性としての性や情念のくびきから逃れられないヒロインの境遇を裏書しているようでもある。 中世には「鉄の処女」なる拷問道具があったが、この胴衣はいわば「木の処女」であり、若く美しい体型からの崩れを許さないというより、むしろその中に肉体を閉じ込めたまま夭折に至らしめる恐ろしいコルセットにも見える。
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