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だが、作り手はヒロインに対して真の意味での地獄を与えてはいない。
従僕の放火と焼け落ちる厩の画面、その後に続く従僕のヒロインへの報告の場面で、ヒロイン及び観客は従兄の死を知るものの、本来は凄惨なものであるはずの彼の焼死が映像として提示されることはない。
ラストのヒロイン本人の死に関しても同様で、火の中での恍惚とした表情を最後に彼女は観客の前から姿を消す。作り手は彼女が焼け爛れたグロテスクな様相を呈するまでは映さない。
恐怖譚や因果応報譚のセオリーからすれば、彼女はそれこそ苦しみにのたうち回りながら、醜い姿を晒しながら息絶えていくはずである。
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