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雨が止んだ後、晴れた空にかかる虹。
多くの日本人がそうであるように、私も子供の頃から「虹は七色」と教え込まれていた。絵本の中の虹は決まって綺麗な半円形で、きちんと七色に分けられていた。
しかし、実際に虹を目にすると、多くの場合は上部が欠けて両端だけが残った形をしている。
更に言えば、水で薄めた絵の具さながら曖昧な色彩とぼやけた輪郭の中に、赤と黄色と、そして空の色と今一つ境目の分からない青紫がかろうじて認められるだけだった。
「どうして七色に見えないんだろう?」
「他の人には赤、青、黄色以外の四つもちゃんと分かるのかな?」
虹を眺める度に、罪悪感にも似た気持ちに襲われた。
昼間の太陽はちっとも赤く見えない。
夜空の星はどれも小さな点で、五つの角が付いた形のは一つもない。
青信号の色は緑。
どれもこれも不思議だったが、なぜか口にしてはいけないことに思えた。
それから大きくなって、海外では太陽を青や黄色で表現する子供も多いこと、星はそもそも星形ではないこと、英語では青信号を「緑(green)」と捉えることを知った。
虹が一種のプリズムで、本来は明確な色の境目などないことも。
それでも、虹を見掛けると、他の人が捉えた色彩を自分はどこかで見落としているように思える。
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