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善なるもう一人のウィルソンから助けられたはずの女性は、酷似した二人のウィルソンの狭間で迷った挙句、語り手の悪のウィルソンに駆け寄り、結果的に狼狽した彼から殺される。
この描写は、あたかも女性側が望んで彼の餌食になったかのような印象を受け、その意味でも倒錯的だ。
「君は殺人を犯したのか」と現実的な観点で驚嘆する司祭に対して、「そんなことはどうでもいい」と嘯(うそぶ)くウィルソンの冷徹さも際立っている。
彼は自分の悪事を阻止するもう一人のウィルソンの存在を恐れているだけであって、悪行そのものを悔いてはいないのである。
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