映画「世にも怪奇な物語」――第二話「ウィリアム・ウィルソン」

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原作小説が広く知れ渡った内容なので、物語の開始時点から前提として展開も結末も読める作品ではあるが、主人公の魅力で最後まで引っ張る点では成功している。 また、幼い少年たちが禁欲的な生活を強いられる寄宿舎の息詰まるような薄暗さ、医学校の講堂の学究的な静粛さ、瀟洒な軍服に身を包んだ主人公が出入りする社交界のきらびやかさ、そして最後に斃(たお)れる石畳の道路の冷厳さ等、視覚に訴える映像作品としては完成度が高い。 第一話が原作小説では男性だった主人公を女性に変え、高慢な美女が死に魅せらていく中世の伝説風の物語になっているのに対し、第二話は近世と近代の境目にある時代を背景に本来は憧憬の対象であるはずの美女すら罠にはめて餌食にする冷徹な知能犯青年のピカレスクロマンを描出している構成も興味深い。
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