物語の欠片

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以前、「蝶蛾」というタイトルで途中まで書いたものの、完成を見ていない作品がある。 大まかな筋書きを記すと、以下のようになる。 「中学生の葉子は同じクラスで部活も一緒の美羽と表面的には親友でいたものの、彼女にコンプレックスを抱いていた。 そんなある日、美羽の家を訪れ、彼女の弟の翔亮と知り合うものの、どこか自分を見透かしたような言動を取る幼い少年に対し、葉子は不気味なものを覚える。 翔亮が集めた蝶の標本の中に青く光る羽を持つモルフォチョウを見つけ、葉子はその輝きに魅せられるものの、翔亮は『これは南米にしかいないんだ』と語る。 夏休みに入り、葉子は姉弟と山に出掛け、三人は瑠璃色に輝く羽を持つ蝶を目にする。蝶を追いかけた翔亮は崖から谷川に転落し、葉子は咄嗟に美羽を同じ谷川に突き落としてしまう。 美羽は死に、翔亮は奇跡的に一命を取り留めるが、誰も葉子を疑うことはなく、美羽の死は不慮の事故として処理された。 『助けてくれてありがとう』と素直に感謝する幼い翔亮の表情に安堵を覚える一方で、心に深い罪の意識を覚える葉子。 数年後、大学生になり上京した葉子は、本当には誰にも心を許せずにいた。 しかし、ドイツ人とのハーフである耀と知り合い、『蝶も蛾も同じschmetterling(シュメッタリング)だよ』と笑う彼に固まっていた心が解けていくのを感じる。 耀との恋愛に希望を抱く葉子はひたすら翔亮を避けるが、結局は過去から逃れられないと知る。」
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