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話は変わって、「マリッジ・ブルー」や「ブルー・マンデー」のように、英語では沈んだ気持ちを「青(blue)」で表現するらしい。
だが、個人的に、青は水色から藍色まで濃淡の差はあっても、空や海、あるいは梅雨時の紫陽花(あじさい)を連想する、むしろ爽やかで透き通った印象の色彩だ。
梅雨時の雨が本当の意味で人を凍えさせるには至らず、また、梅雨という季節自体もまぶしい夏の前身であるように、「青」という色で表現できる精神状態も、ひとときの倦怠には相応しくても、度し難い暗鬱にまでは達しない感触をいつも受ける。
かといって、完全な暗闇の「黒」でも、清も濁も際限なく飲み込んでいく気配があり、自分の中で受け止め切れない痛みを示すには、やはり適さないように思う。
息苦しさが堆積し、砂を噛むような感覚には、曇り空や鉛のグレーこと灰色の方が似つかわしい。
時たま濁りが薄れることはあっても、決してまっさらな白に戻ることはない。暗がりが色濃くなっても、まだどこかに灯りが点いている。
何らか病名の付く「鬱」か、それとも、かりそめの「欝」か。
近頃の私は、ずっと灰色の波の上にいる。
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