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体を抱き締めても抵抗はされなかった。むしろ細い腕は俺を引き寄せ、離れない。
いつしか互いに息を弾ませて長いキスに没頭している合間に、唯が囁く。
「さっきの」
「ん?」
「……今度……また、して?」
「痛かったろ?」
胸に頬を埋めた彼女は上目遣いで俺を見つめ、
「慣れてきた頃にね……ちょっとだけ、よかった気がした」
「……いやらしいな、君は」
そんな私にしたのは、貴方だよ?
そう言って、唯はまた俺にキスをした。
指輪を交わしても、唇を重ねても。
未だ唯の全てが俺のものになったとは思っていない。
テーブルに置いていた小箱を手に立ち上がる。
「温かいミルクチョコレート、入れてくるよ」
「あ、かたじけない」
唯の頬に、屈託のない笑顔が戻っていた。
彼女と初めて出会った日、俺はこの笑顔に惚れたのだ。
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