二月、第二金曜日

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 ……大事な時期だから、君にはしばらくの平穏をあげる。  戸棚のカップ、冷蔵庫から牛乳を取り出した時。  突然胸中を占めた激しい苛立ちを、奥歯を噛んで堪えた。  但しこれ以上、俺の不安を先送りにはしない。  今度こそ君に付き纏う、あいつとの縁を断ち切ってやる。  その為の手段は――選ばん。  ゆっくり息を吐いて見遣った傍らのテーブルには、やつが持参した土産物がある。  見たところ高級菓子らしいが、職場の連中に差し入れると言って取り上げた。 「……」  リビングからはテレビを観始めた気配。  さっきの唯の笑顔を思い浮かべて平常心を取り戻そうとしながら、木の棒を摘まんで箱からチョコレートを一つ取り、匂いを嗅ぐ。  この瞬間だけでも穏やかでいたかったのに。  深く濃い色をしたそれは、ほろ苦い香りがした。 了
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