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「よう」
穏やかな声に普段通り応え、
「来てたのか」
「里帰りした時の土産持って来た。よかったら」
そう言ってやつは微笑む。
「悪いな。ありがとう」
白い端整な顔と切れ長の目を見つめ返し、とりあえずの礼を言った。
この数ヶ月姿を見せなくなったと思っていたら、単に里帰りか。
落胆した一方、忘れかけていた黒い不安がむくむくと俺の中で形を作り始めていく。
そんな時にだ。
「なあ」
「ん?」
「あんたの部屋、冷える」
ヘルメットを取り上げながら、やつは続けた。
「ストーブかヒーターくらい買え。一人であんたの帰りを待ってる身重の唯が可哀想だ」
「……」
元々余裕と自信に満ちたやつの態度が、今はやけに気になる。
……ストーブだと?
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