第1話

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呼ばれたーー気がした。 だから私はあの場所へ足を運んだんだ。 私の家がある狐白山の頂、そこにある、狐白神社へ。         * 私の家が麓に位置するとして、狐白神社までの距離はざっと500メートル。 そんなに遠い距離ではないにしても、今は8月、夏真っ盛り。 しかも高校から帰宅後にそのまま家を飛び出してきたせいもあり、汗でブラウスが身体に張り付いて、なんとも不快だ。 こんな思いをしてまで狐白神社へ向かう意味なんて、本当にあるのだろうか… そんな自問自答を繰り返しはしても、身体は自然と歩みを進める。 まるで、何かに誘われているかのように。 なんて言ったら、また母さんに、古風だ、古臭い、と言ってからかわれるのだろう。 でも、私も好きで堅苦しくしている訳じゃないし、寧ろ他の人達が軽すぎるだけだと思う。 ーーと、物思いに耽っている内にーー着いた。
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