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額から流れる汗をサッと袖で拭い、塗りの剥げた鳥居を潜る。
ーー瞬間、我が眼を疑った。
あまりにも人気がなく、いつしか神主すら居なくなったこの神社。
そんな寂れた神社の境内に一人の少年が立っていたから。
少年はただただ、古びてボロボロになった本殿を眺めている。
どうしてそんな事をしているのか。
考えても理由なんて出てこない。
でもーー彼の後ろ姿は、とても綺麗だった。
毛先に少し癖のついた艶のある黒髪。
雪のように白い肌。
そして、モデルでもしているのではないかと思わせるプロポーション。
そんな少年に、私はいつしか釘付けになっていた。
ーーそよ風がそっと頬をなぜる。
刹那、少年が踵を返した。
あれから幾分経っただろうか。
やっと動いた少年は、私を視界に入れるなり、優しく微笑む。
まるで、天使のように。
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