第1話

5/12
前へ
/12ページ
次へ
私の返事に彼がまた微笑む。 と思った矢先、次は真剣な顔つきで私を見つめてきた。 「すいません。やはり熱が。」 少年の手が、再び私の額に触れる。 だが、今度はあの懐かしい温もりを感じる暇もなく、直ぐに離された。 少し名残惜しい気もするけど、きっと気のせい。 「少し、熱いですね。もしかしたら日射病かもしれません。」 言われて見れば、確かにさっきから熱っぽいような。 それに、身体もダルい気がする、 ーーあれ…?なんだか意識が、遠のいて… 突然、視界がぐらついた。 一気に全身の力が抜けていく。 倒れる。そう思った。 でもーー私の身体が地面に伏すことはなく、代わりに倒れ来んだのは、少年の腕の中。 もちろん狙ってやった訳じゃない。 偶然にも倒れた方向に彼が居て、たまたまそれが腕の中だけだった話。 どちらにも悪気はなく、いやらしい企みがあるわけでもない。 だけど。結果的に私達は抱きあってしまっている。 所謂ハグという奴だ。 いや、そんなことはどうでもいい。 とにかく、今すぐ此処から逃げ出したい。 なのに、どうしてこの身体は言うことを聞いてくれないんだ…
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加