第1話

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もどかしくて仕様がない。 いや、もしかしたら普通の女の子にとってこの状況は好ましいのかもしれないけどーー私は男という生き物に無関心な訳で、故にこの状況がただただ恥ずかしい。 それに、よく考えれば今の私は汗だくだ。 そんな女と抱き合って喜ぶ人間なんてのは一部のマニアだけだと思うし、大概の男性は不快感を感じる筈。 だいたい不慮の事故とはいえ初めて会った男の子と抱き合っている時点でおかしいし、あり得ないのだ。 ーーていうより、良く働くな、私の頭。 朦朧としている筈なのに良く回る頭に、我ながら感心する、と同時に、身体に妙な浮遊間を覚えた。 ーー眼前の景色が突如、少年の胸板から雲ひとつない青空へと変わる。 視界の端には彼の顔。 直ぐには分からなかったが、間違いない。 私今ーーお姫様抱っこされてる。 駄目だ。急展開過ぎて私の頭じゃ追い付かない。 完全に限界だ。 もう考えるのはやめにしよう。 あまりにも自分にとって非日常なことが続きすぎて、思考回路を閉じる。そんな私の気など知る由もない彼はゆっくりと踵を返し、そして歩き始めた。
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