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少年が一歩踏み出す毎に、全身に振動が伝わる。
テンポ良く続くそれが数回と繰り返された後、私は硬いモノの上に下ろされた。
ベンチだ。
狐白神社の軒下、丁度日陰になる位置に置かれた、木造のベンチ。
長い間手入れをされていないであろうそいつは、少しばかり朽ちていて、あまり頼りがなく、更には所々に訳の分からない落書きがされてあるおまけ付きだ。
おそらくは、神主が居なくなって暫く、不良のたまり場と化していた影響なのだろうけどーー
兎に角、そんな普段なら出来る限り座りたくないようなベンチに私を下ろした彼は、少し待っていてください、とただそれだけを告げ、足早に去っていってしまった。
まぁ、動けと言われても動けないのだけれど。
本当、なんとも情けない話だよね。
いくらやむを得ないとはいえ、他人様に迷惑をかけて。
とはいえ、現状頼れるのも彼しか居ないのだけれど。
半ば何も出来ない自分に苛立ちを覚えながら、ため息をつく。
同時にーー少年が帰ってきた。
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