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「うぷっ…………わ、分かった。それじゃ、着替えてくる…………」
「そこの部屋に入ってねー☆ ボクの個人的な自室だから☆」
理事長が指差したのは明らかに場違いなピンク色のドア。入るのを躊躇われるような扉なのだが、着替えを見せるなんていう羞恥を晒す訳にもいかない。
「さぁ、セイム。行ってきてください」
「ウキウキしやがって…………くそっ」
俺は制服を抱きながら沈んだ様子で扉の向こうへと入っていった…………。
ガチャ
「あっ、セイム。どうでした?」
「…………最悪だな」
中で制服を着用した俺は気分を幾分か落として出てきた。嬉々として気分を訊いてきたミレアに少しイラッしたのは秘密だ。
「何だよあれ……? あの部屋って異次元なんじゃねぇのか……?」
「酷いなぁ☆ ボクの写真が飾ってあるだけじゃないかぁ☆」
「それがダメなんだろうがっ!! 何が嬉しくて爺のコスプレ写真なんざ見なきゃいけないんだよっ!!」
そう。中に入った俺に待ち受けていたのは壁、天井、床……その全て一面に貼られた理事長のコスプレ写真。スク水、魔法少女、セーラー服、ゴスロリ、巫女服、アメリカンポリス…………もう考えうる限り全てのコスプレを網羅していた。
考えてもみてほしい。見た目はただの爺なのだ。
それがコスプレをしてポージングしながら写ってる写真なのだ。体の節々がヨボヨボなのだ。股間がもっこりしてるんだ。
吐き気が止まらん。どうやっても。
「ボクのプリティーな写真を見れて嬉しくないのかい?☆」
「黙れ。愚劣な写真なんざ不愉快になるだけだろうが」
爺がプリティーとか言うなって…………ダメだ、もう吐いていいよね? 俺、耐えたと思うんだけど?
「そんなくだらない事より…………セイム、その制服それなりに似合ってますよ」
理事長のコスプレ写真部屋の事をそんな事で切り捨てたミレアは、俺の制服姿を評価してくれた。
それなりにって…………まぁ、ミレアらしいな。
「おう、ありがとよ。言い忘れてたけどお前も制服似合ってるぜ」
「当たり前な事を言わないでください。気持ち悪い」
よし、泣こうかな。
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