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「ふふふ、ミレアの可愛さに思わず鼻血を流した方も居たようでしたね。良い気分です」
「何変な事言ってんだ……?」
理事長室から退出し、しばらく歩いて吐き気が治まった頃に目的地に辿り着いた。そこでいきなりミレアがよく分からない方向を向いて何かを言い出したのだ。
正直コイツのキャラが掴めない。
「変な事とは失敬ですね。読んでくれている読者へのファンサービスってやつですよ。そんな冷たい態度だと票を入れてもらえませんよ?」
「…………マジで何言ってんだ?」
「はぁ…………これだからセイムはダメなんです。数少ない女性ファンに微笑んでください。さぁ、あそこにカメラがあります」
「カメラ……? あそこにあんのか…………?…………ははっ」
俺はミレアの言う通りに、一見何も無い所へと微笑む。
「何で何も無い所に微笑んでるんですか? 気持ち悪いです」
「そんなこったろうと思ったよ!」
「そもそも小説なのにカメラなんてあるわけ無いじゃないですか。頭悪いんですか?」
「おーい、コイツの頭を治す人いないんですかー?」
小説とかカメラとか読者とか…………これが小説ならメタ発言もいいとこだな。まぁ、実際に見たならただの厨二発言なんだけど。
「まぁ、いいです。さっさと本題に入りましょう」
「……おう」
最初からそうしとけよ、と言いたかったのだがそれは喉の奥へ飲み込む。また話が長くなると感じてしまったからだ。
これ以上話を拗らせても俺が罵倒される方向へと進むだけだ。これはミレアと過ごしたこの短い時間で酷く痛感してしまった。
「ここは体育館前です。今は精霊の属性を調べる授業を行ってる筈です」
そう言ってミレアが指差したのは、目の前にある剛強な金属の扉。その扉は固く閉ざされていて、俺のような子供では容易に開ける事はできないとすぐに分かってしまう雰囲気を放っていた。
俺は少し感心したあとにミレアの方へと向く。
「中から全く声が聴こえないんだが…………あれか? 音精霊って奴の働きなのか?」
「そうです。バカなのによく分かりましたね。よくできまちたー」
そう言ってミレアは手をパチパチと叩く。
ヤバイ、殴りてぇ。
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