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「言ったそばから迷子になるなんてどうかしてますね。セイムはドジっ子でも目指してるんですか?」
「いや、俺は悪くないぞ。悪いのはぶつかってきた生徒だ。決して俺は悪くない」
「言い訳は見苦しいです。生まれ変わって、さらに生まれ変わってから出直してください」
「俺の来世否定された!? 現世どころか来世まで否定された!?」
「さて……空いてる場所は…………あっ、ありました。あそこに行きましょう」
「無視ですね、はい…………はぁ」
軽くツッコミを無視された俺は、人混みのごった返すこの体育館でそれなりに空いてる場所を見つけたミレアと共に、頭を擦りながらその場所へと足を踏み出す。
ざわざわ……
ざわざわ……
ざわざわ……
ざわざわ……
「…………やっぱ、そうか」
「何がです?」
周りのざわめきを感じた俺がとある事を確信すると、前を歩いていたミレアが首だけをこちらへ向けて問い掛けてきた。
「これだよ、これ」
「あぁ……やっと気付いたんですか。鈍いにも程がありますね」
「悪かったな、鈍くて」
俺がその答えを自分の頭部を指差して示すと何故か少しだけ罵倒された。
解せぬ。
ちなみに、俺が確信したこととは…………髪の色の特異さだ。周りを何度も見渡してみたのだが、金色と紫色が一人も見当たらないのだ。
赤、青、緑、茶、黒、白、灰…………この7つしか色が存在していないのだ。俺は何故皆がこんな色なのかも大体分かっていた。
多分属性なのだろう。火精霊を扱うのが得意ならば赤髪とか…………灰色は恐らく音精霊。
だからこそ俺達はこんなにも奇異の目線で見られているのだ。偉大なる精霊かもしれないのに加え特異な髪の色…………さらに召喚主も特異な髪の色。
これほど奇異な状況はほとんどないだろう。
「…………ふぅ」
「もう疲れたんですか? マッサージしてあげましょうか?……───頭に」
「何か怖いから断る」
空いていた場所へと移動し、一息吐いた俺に投げ掛けられたのはミレアの親切心のようなからかい。
ミレアはこんな視線に慣れてるんだろうな…………ま、それもそうか。多分だけどこの世に生を受けた時点からこの視線を受けてるだろうし。
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