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《…………あまり、オススメできないよ?》
ユコラは躊躇いがちに答えた。俺はそれにすら迷うことなく毅然とした態度で鼻を鳴らす。
「はっ……それでも俺はやる」
《君自身に何らかの被害があるかもしれない》
「そんなのフーレスがいないよりマシだ」
《君が彼女に会えなくなるかもしれないんだよ?》
「俺は、フーレスが生きてくれたらそれでいい。それ以外は望んでいない」
今の俺はかなり頑固だ。何故なら俺の中でのフーレスは、どんな事項よりも最優先となっているから。最重要で最優先で決定されている事項こそがフーレスを取り戻すこと。
それ以外はどうでもいい。俺にとっては後回しすべき事項だ。
《…………はぁ。ま、君ならそう言うと思っていたんだけどね。あっ、思ってたなら君にも僕の考えが分かってるんじゃない?》
「…………ああ」
実はユコラがこの話題を出す前からどうやってフーレスを取り戻すか分かっていた。まぁ、ユコラがそれを思考に出したから分かったんだが。
《なら、僕からは何も言わないよ。さぁ、君のユニークとやらを見せてくれ》
俺は目を閉じて集中し始める。そして、自分の中を探っていく。
俺のユニークは、同じになること。つまり、俺はユコラでもあるし雹でもあるということ。
ならば、俺はフーレスでもあるわけだ。気持ち悪い話だが、俺は今まで会ってきた全ての者と全く同じなんだから。
ここで俺のユニークの応用を使わないといけない訳だ。
「うっ…………うぐぐ……!!」
俺の中にいる筈のフーレスを見つけ、俺はそこから代償を払ってフーレスを生成しなくてはいけない。名付けて【同型】だな。
ここで疑問が浮かぶだろう。何故代償を払わなければこのユニークを発動できないのか? 別にそんなの無くてもできるのでは無いだろうか?
その疑問の答えはこうだ。『これは代償ではないが、代償である』。
別に代償という部類に入るモノではない。実体が無いフーレスを俺を使って復活させるんだ……あるべき等価交換って奴だ。
ユコラが散々躊躇っていたのはその代償が何か分からないから。未知の代償ほど躊躇いたくなるものはない。それがその者の全てであったら? それが全異世界であったら?
そんな不吉な思考が自然に頭に過ってしまうため、ユコラは俺に言いたくなかったのである。
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