ワールド・アナフィラキシー

残虐から始まる物語に唾を吐く物語も多い

　　　「中学生２８名殺害　生徒の犯行か？」

　本日未明、Ｇ県Ｔ市内の中学校に通う３－Ａ組の生徒２９名のうち、２８名の生徒が死亡した状態で発見された。
　遺体はいずれも教室内で発見されており、その全て鋭利な刃物で急所を切り裂かれた斬死体となっている。一部、胴体が切断された遺体も確認されている。
　現場からは凶器と思われるアウトドア用の手斧が見つかり、衣服に付着したと思われる返り血の血痕が祢宜ケ沢上（ねがそれ）光春（みつはる）さんの下駄箱まで伸びていた。

　クラスで唯一死亡が確認されていない祢宜ケ沢上さんの指紋と手斧に付着した指紋が一致しており、警察は祢宜ケ沢上山さんの犯行の可能性が高いとして捜査にあたっている。
　また、祢宜ケ沢上さんの行方は現在も不明。

　◆◆◆

「なにこれ」
「ね、反吐が出そうでしょ」
「祢宜ケ沢上って、名前なの？」
「問題は、祢宜ケ沢上が名前なのではなくて、この現場の証拠写真にあるの」

　小無雁が取り出したのは、デジタルカメラだった。何故ここでデジタルカメラが、という疑問はさておき。
「電源どうやって入れるんだっけ」
「ＯＮ／ＯＦＦボタンあるでしょ？」
　この事件と思春期の自己顕示欲との関係性もうやむやだし、という懐疑心も置いといて。
「撮った写真ってどうやって見るんだっけ」
「緑色の三角だよ」

　明滅。

「あ、いけない、間違えて一枚撮っちゃった」
「僕が操作するよ」

　小無雁さんはどうやら機械音痴らしい。音痴という段階でいいのだろうか。

　残念そうに肩を竦める小無雁さんに連動するようにすぼまる自動オカルトヘアー。どうやら、彼女の感情に倣ってリアクションするらしい。