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ものの10秒で開いたフォルダーから液晶に映ったのは、まさしく「凄惨」といえる一枚だった。
ホラー映画の販売催促用のパンフレットのようであった。数々の学生の死体が横たわり、床、壁、天井に血が飛び散っている。黒板には、その血を絵具代わりにして描いたのだろう。大きく「円環」と書きなぐってあった。
時刻は今と同じくらいだろうか 掃除用具入れ付近の遺体に至っては、胴体が上下に切断されてしまっている。
黒板には、赤く濡れた、アウトドア用の手斧が立てかけてあった。
「これ見てどう思う?」なぜか小無雁は得意げだった。
「どうもこうも……。現場の写真かい?」
「ご明察」
「君が撮ったのかい?」
「もちろん」
「さっきデジカメの電源も入れられなかったけど」
そよ風のようになびいていた小無雁の髪の毛が硬直する。嘘ついているな。
笑みがどことなくぎこちない。白状するか嘘を上塗りするか迷っているようだ。
「まぁ写真については言及しないさ。それで、小無雁は何を言いたいんだ」
「そうそう、それで、私、この事件のその後について考えたの」
「その後?」
気が付けば、僕が帰ろうとしていた時間は20分以上オーバーしていた。小無雁に遭遇しなければ今頃帰宅していただろう。秋は陽の沈みが早く、教室内に差し込んだ光が、学校の梁間方向と平行しそうだった。
「今回の凶器はこの手斧で間違いないわ。斬死体だけ確認されているし、人の胴体を切断できる切れ味があるかは疑問だけど」
「そんなものをわざわざ現場に置いていく動機が理解できないな。不利益な証拠品は気づかれないように処分するのがセオリーじゃないのかな」
「私も同じことを考えたのよ」
ずい、と目前まで迫ってくる小無雁。可憐で整った顔立ちは、くだんのロングヘアーから香るシャンプーと相乗し、無意識に目線をそらしてしまう。
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