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9月の登校初日、はじめての席替えが行なわれた。わたしにとってある意味運命的な縁をもたらした席順とはついにお別れで、さびしいようなほっとするような……。ほっとするというのは、これでいくらかは学校生活が平穏になるとの期待をどこかしら抱いていたからである。机と椅子を移動する際、ユカ~とエリナが別れのハグをしてきた。多分に冗談混じりのアクションだが、この人がなぜここまでわたしに執着するのかはいまだわかっていない。
が、それもいまとなっては無意味な疑問に違いなかった。なぜなら、すでに彼女を遠方の自宅に招くほどの関係がわたしたちのあいだには成立してしまったからである。彼女がいじめの疑いをかけられたとき、被害者とされたわたし自ら体を張るようにして誤解を解いたし、文化祭では手を取り合い、ときに衝突し、和解した。どこからどう見ても、わたしたちの友情は麗しい。麗しすぎて、レズ説が流れるほどだった(これもわたしたちの関係の不可解さが原因かもしれないが)。奥沢ぁ、お前いくら男に相手されないからって須藤ちゃんに手ぇ出すなよ。バーカ、クラスの男子なんざあたしらの眼中にないっつーの。ね~スドウちゃん。こんな具合に、男子の冷やかしをエリナはもはや否定もしないありさま。それどころか頬にキスまでしてくる始末である。これはちょっと距離を置いたほうがいいかも……。わたしは薄々そう感じていた。
新しい席は前から2番目のやや窓寄りの列だった。ポジション的にはあまりおいしくないが、1つだけいいことがあった。わたしのななめ前がジュリちゃんだったのである。教卓のすぐ前になってしまった彼女は、ついてないねとわたしに苦笑いを浮かべた。
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