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「慎之助、流水が相手して欲しいそうだ」
「えっ…俺なんて未熟者が…」
「まあまあ、そう言わずに」
主将に背中を押され藍原は一歩前にでた。
「流水さん、よろしくお願いします」
「あ…お願いします」
慌てて礼をすると、藍原は一息吐き竹刀を構えた。
(ちょ…コイツ…すごい)
向き合っただけで伝わってくる。
軽く竹刀の先が触れた時、俺は悟った。
(コイツは、別格だ…)
この地域では、同年代で俺より強いヤツなんていないと思っていた。
全国に行かないと無理だと。
こんな近くで…
しかも、まさか中学生にいたなんて…
終わりの合図があると、藍原は静かに竹刀を置き俺の前に正座した。
面を外し両手を前につき、額がつきそうなくらい深く礼をする。
「ありがとうございました」
その姿はどこまでも美しく、気高ささえ感じた。
「ありがとう…ございました」
同じように礼をする俺に、初めて顔に中学生らしい嬉しそうな笑みを浮かべた。
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