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「おまえ…おもろいヤッちゃのう」
「それはどうも」
「えっと…ソータやな。俺は慶次(けいじ)や。こう書いてこう書いて…こない書く“慶次”」
空中に指で書いてくれているが…非常に申し訳ないことに、何と書いてくれたかわからない…
「仲良うしょうや。俺の横こいよ。おまえ、邪魔や。どっかちゃうとこ替われ」
俺を手招きすると、ドカッと隣の席の生徒の脇腹を蹴り飛ばす。
「「「え゛えぇぇ~!!?」」」
教室中から『信じられない』と言わんばかりの声が上がった。
椅子から蹴り落とされた生徒も『どういうことぉ!?』と声をあげ和久田を見上げる。
「じゃかましわっ、おまえらなんやねん!!」
「せやかて…なあ」
「そうや…」
みんな思い思いに呟き前を向く。
隣の男は蹴られた脇腹を押さえ立ち上がると、よろよろとすぐそばの空いている席に座った。
「なんやおまえら…文句あんのかこらっ」
何が気に入らなかったのか目をつり上げ低い声ですごむと、“ドカッ”とかかとを踏み潰した上靴を履いたまま自分の机を蹴飛ばした。
はずみで前の席の生徒の背中にぶつかり、『ぐあっ』と声が漏れる。
「文句あるやつから前に来いや!」
ドスの効いた低い声に、誰一人として『うん』とも『すん』とも声を漏らさない。
先生さえも呆れているのか、黙って後ろを向き『まったく…またか』と嘆息する。
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