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新しい高校は共学で、絆愛独特の男臭さが微塵もなく、友達もできた俺は次第に学校に馴染んでいった。
「剣道してたのなら、入部してよ」
どこから誰に聞いたのか、同じクラスの剣道部員・松岡が声を掛けてきた。
「う…ん…。それより、先に見学…していい?」
逃げる口実を作るため、俺は“見学”と言う言葉を選んだ。
見て『俺なんて中学レベルだし』『やっぱり無理そう』って断ろうとも思ったから。
俺のそれまでに築き上げた自信やプライドが、この時はすっかり崩れていたから…
部活は武道場で、柔道部と半々に使用してと言うこじんまりとしたものだ。
三年の先輩達が引退し、一・二年だけの剣道部は僅かな人数で寂しいものだった。
「先輩、見学希望者です。経験者らしいですよ」
松岡は二年の主将らしき先輩に俺を説明している。
先輩は嬉しそうに期待の目で俺を見て『ゆっくり見ていけよ』と声かけた。
(ウザ…誰も入部するとか言ってないのに…)
作り笑いを顔に浮かべ、俺は整列する剣道部員を煩わしく思いながら、移動し片隅で練習風景を見ることにした。
(どのタイミングで『無理です』って言おうか…。やっぱ休憩になってからな。ああ…めんどくさ…)
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