第13話 小田切基道編②

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【さっきはありがとうございました。もしご迷惑でなければ、夜ご飯いっしょに食べませんか? 今、新宿にいます】  ずいぶんと積極的な人だ。  くすっと笑って、【いいですよ】と返そうとして止めた。  ご飯を食べる、ということは、利き手ではない手で箸やフォークを使うということだ。千華子さんにも、周囲の目にもかなり不自然に映るだろう。  僕は、【もう食べましたから、すみません】と答えた。  すると。 【じゃあ、小田切さんのいるホテルに遊びに行ってもいいですか?】  ……。  ……こういうことを言う女性には見えなかったのだが。  旅行先で行きずりの恋愛を楽しみたいということなのだろうか。  据え膳食わぬは男の恥、ということわざが脳裏に浮かぶ。  それといっしょに、麻衣子の顔も。
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