第13話 小田切基道編②

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 女性の正面に現れたのは男性だ。  30代半ばの長身の男性で、髪は黒くて、切れ長の目に高い鼻のイケメン。サラリーマンふうの爽やかな感じ。  ただし、僕には似ていない。  僕は一重まぶただが、あの男性は二重まぶただ。  だけど。  千華子さんが教えてくれた、コスモポリタン社長の外見の特徴に当てはまる。 「階段、降りますか?」  僕は千華子さんの気遣いに答えなかった。 「すみません、千華子さん。急用ができてしまいました。ここでお別れです」 「えっ、……もしかして、さっき携帯いじってたのは?」 「そうです、もともと東京へは仕事がらみで来ているもので」 「そうなんですか……」  千華子さんは残念そうに俯いたあと、ハンドバッグから携帯を取り出した。 「あの、アドレス交換しませんか?」
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