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女性の正面に現れたのは男性だ。
30代半ばの長身の男性で、髪は黒くて、切れ長の目に高い鼻のイケメン。サラリーマンふうの爽やかな感じ。
ただし、僕には似ていない。
僕は一重まぶただが、あの男性は二重まぶただ。
だけど。
千華子さんが教えてくれた、コスモポリタン社長の外見の特徴に当てはまる。
「階段、降りますか?」
僕は千華子さんの気遣いに答えなかった。
「すみません、千華子さん。急用ができてしまいました。ここでお別れです」
「えっ、……もしかして、さっき携帯いじってたのは?」
「そうです、もともと東京へは仕事がらみで来ているもので」
「そうなんですか……」
千華子さんは残念そうに俯いたあと、ハンドバッグから携帯を取り出した。
「あの、アドレス交換しませんか?」
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