第13話 小田切基道編②

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◇◇◇  パステルグリーンのスプリングコート。  これを身に着けている女性客は、小橋少年の母親と思われる女性以外に見かけない。  さらに、隣には長身の、目鼻立ちの整った男性。  目立つ特徴を持っていてくれて助かった。   階段を降りて周囲を見回すと、通路を歩いていく2人の後姿を見つけた。  2人はウィンドウショッピングを楽しみ、カフェで休憩し、商業施設をあとにした。  幸いなことに、車で来たわけではないようだ。  O駅から電車に乗り、1回乗り換えを行ってS駅で下車した。S駅西側に位置する大通りを南下し、さほど高くないビルやアパートが並ぶ区域にさしかかる。  どの窓もブラインドの閉まった7階建のビルに、2人は入って行く。僕は左手でポケットから小型カメラを取り出し、さりげなく2人が建物に入る瞬間の写真を撮った。  2人の姿が見えなくなると、ビルからほど近いコインパーキングに行き、自販機で天然水を買った。  それから、2人の入ったビルの正面にあるマンションへ入るフリをして、マンションとマンションの間にある路地に入り、身を潜めた。
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